一杯のミルクを

「うわっ」
一口飲んでアルルは顔をしかめた。
「キミよくこんなの飲めるねぇ・・・・・」
アルルが今飲んだのはシェゾ言うところの『カフェ・オ・レ』だ。
勿論、普通のカフェ・オ・レならコーヒーが苦手のアルルでも飲める。

だが、このカフェ・オ・レは普通じゃなかった。

「これじゃちょっとの牛乳入り超ブラックコーヒーだよ」
そう。
この『カフェ・オ・レ』はめちゃくちゃ苦かったのだ。
「文句言うくらいなら飲むな。
だいたい『カフェ・オ・レ』はもともと『牛乳入りコーヒー』という意味だから何もおかしくはないだろう。
それが普通だ。」
シェゾは読んでいる本から顔を上げようとすらしない。
「・・・・・キミの舌はどうかしてるよ・・・・・」
文句を言いつつもアルルはそれをもう一口飲んだ。

・・・・・・・やっぱり苦い

「ねぇ、お砂糖ってある?」
「・・・・・・砂糖がないと飲めないのか・・・・つくづくお子様だな。」
「うるさいなぁ・・・・・・キミと違ってボクの舌は普通なの!!」

「・・・・棚の中にあるはずだ」

「そういえば、さ」
砂糖を探しながらアルルはシェゾに話しかけた。
「キミ、いつからカフェ・オ・レ好きになったの?」
前はブラックしか飲まなかったよね?
そう、自分があっちの世界にいたころ、彼はずっとブラックしか飲まなかったのだ。
シェゾはそれまで読んでいた魔道書から顔を上げるとため息をついた。
「俺が何好きだろうがお前には関係のないことだろう」
・・・・・身も蓋もない。
アルルは不満そうな顔をしたもののそれ以上深く追求はしなかった。
なぜなら棚の奥にしまわれている砂糖らしきものを発見したからだ。

次へ